- Dさん(78歳)は、妻(72歳)との間に40歳の一人娘がいる
- 長女は、生まれつき障がいがあり、自立して生活していけるだけの理解力・判断力が不足している
- 自分の死後は、妻が長女の面倒をみるだろうが、妻も亡くなったあとの長女の生活が心配
- さらに長女も亡くなったあとは、財産を残す家族もいないので、お世話になった社会福祉法人に財産を寄付し、長女と同じような障がい者のために役立ててほしいと考えている
解決策
1)法定後見人選任申立て
- 今のうちから、長女の後見人として信頼できる人を探し、予め法定後見人選任申立てをする
2)信託契約の締結
- 委託者・受益者=Dさん、受託者=信頼できる親戚、とする信託契約を締結
- Dさんが亡くなった場合は、Dさんの妻が受益者となる
- Dさんの妻が亡くなった場合は、Dさんの長女が受益者となるが、長女の生活や療養に必要な資金は、受託者から法定後見人に必要に応じて給付する
- Dさんの長女が亡くなった場合、その時点で信託契約は終了
- 信託の残余財産の帰属先を、社会福祉法人に指定
- 受託者である親戚には、信託報酬を毎月支払う
解決策の効果
- Dさんや妻が元気なうちから法定後見制度を利用することで、長女の生活を支えるための2人の負担が軽減されます。また、長女の生い立ちや趣向に関する情報や、身上監護・財産管理に対する希望を後見人に直接伝えることができ、長女の将来の生活に対する不安も解消することができます。
- 長女には遺言能力がないため、通常の相続では、両親の資産を受け継いだ長女が亡くなった場合、相続人不存在となり、残余財産はすべて国庫に帰属してしまいます。信託契約を活用することで、Dさん亡きあとの妻や長女の生活を支えながら、最終的に障がい者福祉に役立てたいというDさんの希望を実現することができます。
- 財産管理を行う受託者の親戚に対しては、Dさんが元気なうちはDさんが、Dさん死亡後は妻が目を光らせ、定期的に資産状況の報告や財産給付を求めることで、勝手な暴走を防止することができます。Dさんと妻がともに亡くなった場合は、長女に代わって後見人が受託者を監督します。
この事例は、宮田総合法務事務所様の下記HPの事例を参考にさせて頂き編集しています。https://legalservice.jp/shintaku.html