相続争いの防止や認知症対策など、現代のさまざまな課題を解決できる、とても便利な「家族信託」ですが、実は、家族信託が注目されるようになったのは、つい最近のことなのです。そのきっかけは2006年の「信託法改正」。
それまでの信託法は、1922年(大正11年)に制定された、カタカナ文語体のとても堅苦しい法律でした。それもそのはず、当時の社会問題であった高利貸し的な信託会社を取り締まるために作られた法律だったのです。その後、信託業務は銀行が行うようになり、主に経済界の資金調達や資金運用の分野で発展してきましたが、長い間、信託法自体が改正されることはありませんでした。
ところが、社会・経済の発展にともなって、信託をもっといろいろな投資・金融手法として活用したいという期待が高まってきました。一方、急速に高齢化が進むなか、高齢者の財産管理や遺産承継を行う制度としても信託という仕組みへの期待が高まってきたのです。このように、経済界と個人生活両方の分野で、新たな信託へのニーズが高まった結果、84年ぶりに信託法が大改正されることになったのです。
2006年12月改正、2007年9月から施行された新信託法によって、次の点に大きな変更が加えられました。
- 受益者の権利行使を高めるための規制整備
- 受益者が複数いる場合に多数決で意思決定する制度の創設
- 受益者の代わりに受託者を監視・監督する信託監督人・受益者代理人制度の創設
- 受託者が受益者に信託財産の運用情報を提供することを義務化
- 受託者が違法行為をした場合の差止請求権の創設
- 受託者の義務を適切に行うためのルール整備
- 忠実義務に関する規定の緩和(受益者の利益を実質的に害しない場合は利益相反行為を許容するなど)
- 自己執行義務に関する規定の緩和(第三者への信託事務の委託など)
- 多様な信託の利用に対応した新制度の整備
- 信託の併合・分割の手続きの明確化
- 新しい信託に関する規定の整備・創設(受益証券発行信託、限定責任信託、自己信託、目的信託、担保権の信託、遺言代用信託、受益者連続型の信託)
こうして「家族信託」が登場することとなったのですが、新信託法が施行されてはや10年以上たちました。新しい制度なので、まだまだ実例も少なく、法律の解釈も定まっていない部分もありますが、最近になってようやく「家族信託」という言葉を耳にする機会が増えてきました。あなたやあなたの周囲の方が抱える問題を解決するために、「家族信託」の活用を検討してみませんか。