前回、信託法が改正されたことにより、新しい仕組みとして家族信託が登場したことをお話ししましたが、実は、信託に関連して信託法のほかに信託業法という法律があります。この信託業法とは、営利目的で信託業を営む信託銀行や信託会社を監督するための法律で、信託業を営むためには内閣総理大臣の免許または登録が必要となることや、最低限必要な資本金額、販売・勧誘する際のルール、受託者が負うべき責任などについて定めています。
信託業法の適用を受ける信託銀行や信託会社が、信託報酬を受け取りながら、所有者から委託された財産の管理や承継を行うことを「商事信託」といいます。これに対して、財産の所有者の家族などが財産の管理や承継を行うことを「民事信託」といい、家族信託はこの民事信託の一種となります。民事信託は営利を目的としませんので、信託業法の適用を受けることはありません。
民事信託(家族信託)と商事信託には、一般的に次のような違いがあります。
民事 信託(家族信託)
商事 信託
- 家族や親族が受託者となる
- 信託銀行や信託会社が受託者となる
- 信託財産の規模や種類に特に制限はない
- 現金のほか、自宅不動産や未上場株式会社なども信託することができる
- 一定規模以上の財産に限られる場合が多い
- 金融資産が中心となることが多く、自宅不動産や未上場株式会社は信託できないこともある
- 受託者の権限を柔軟に設定することができる
(財産の管理・処分・新規取得・借入など)
- 免許の種類にもよるが、委託者の指図によるなど、一般的に受託者の権限が狭い
- 信託報酬を自由に定めることができ、一般的にコストが低い
- 営利を目的としているため、信託報酬が割高でコストが高い
- ふさわしい受託者が見つからない場合がある。また、受託者の不正や暴走が起きる可能性がある。
- 一定の資格を持った会社が受託者となるため、不正や暴走が起きにくい
低コストで設計の自由度も高い民事信託(家族信託)ですが、素人である家族や親族が財産の受託者となるため、信託財産を私的に流用したり、横領したりしてしまうという懸念もあります。このような場合に備えて、「信託監督人」を指定して、受託者の仕事ぶりを監督させることも可能です。
あなたやあなたの周囲の方が抱える問題を解決するために、「家族信託」を活用できるかどうか検討してみませんか。