今回は、新しい信託法によって可能になった信託の一つである「目的信託」についてご紹介します。「目的信託」とは、受益者の定めのない信託のことをいいます。特定の個人を受益者とするのではないため、公益的な色彩が強いことから、旧信託法では公益信託だけに認められていました。介護や子育て、地域社会における非営利活動などのニーズに対して、今後この目的信託が活用できるのでは、という観点から、新信託法で創設が認められたのです。
目的信託のしくみ(信託契約による場合)
営利と公益の中間的な信託に位置づけられるため、目的信託にはいくつかの制限が設けられています。
制限の項目 | 内容 |
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設定方法 | 「信託契約」か「遺言信託」(「自己信託(信託宣言)」による方法は不可) |
受託者の監督 | 「信託契約」の場合:委託者が行う 「遺言信託」の場合:信託管理人が行う(遺言に定めがない場合は、遺言執行者または裁判所が信託管理人を選任) |
存続期間 | 20年を超えることはできない |
受託者 | 当面は、信託事務を適正に処理できる財産・人的構成を有する下記法人に限定 ・国、地方公共団体 ・一定の要件を満たす法人(純資産5,000万円以上、取締役等で5年以内に禁固刑を受けたものや暴力団員であった者がいない、等) |
目的信託が利用できるようになったことで、たとえば、次のような要望をかなえることができます。
- 自分の死後、愛するペットの飼育を信頼できる会社にまかせたい。
- 母校の研究施設に、研究のための資金を供与したい。
- 居住する地域の介護、子育て、パトロール等の非営利活動に役立てたい。
まだまだ目的信託の活用は一般的ではありませんが、あなたやあなたの周囲の方が抱える問題を解決するために、「目的信託」が活用できないか検討してみませんか。